鮎京 誠一

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 しかし、その、“安住”すら、誠一は許さなかった。  誠一は、自分の患者として、真を精神科病棟の中の特別室。  四〇四号室に移した。  そこで、毎日のように真は、現実と向き合い、発狂し、意識を失い。  そしてまた次の日には、新しい二つの人格が生まれ、また現実と向き合う。  その為に、毎日欠かさず『二面鏡』を、この真っ白な世界に設置し、その前に彼女を座らせるのだ。  彼女はそこで、一面に映る軽傷の……  元々の美貌が残っている側で生まれる”人格”と。  もう一面に映る、重度の。  惨たらしく崩れた顔の方に生まれる“人格”とを向き合わせさせる。  時に精神科医とその患者。
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