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「今日は報告に来た」
「……亜希ちゃんを殺した犯人逮捕出来た?」
『ゲンキン』な奴。
ここは、拘留見逃して
警察署で別れてそれきりだったんだから
気を遣って、せめて時節の挨拶でも交えて…。
「逮捕出来なかった。……俺が『自らでは』」
「あっ、びっくりした。犯人探しを諦める罪滅ぼしに、私に殴られに来たのかと思ったじゃない。後、2秒で拳が顎に届いたよ」
そう言って
俺の胸倉を掴んで拳を振り下ろすすんでの所だった。
何で、今更俺に触れる。
「ごめん、実は新聞とかニュースで知ってた。警察ってすごいね」
「……そうでもないさ。あれがちゃんと逮捕出来たのは、もっと別の事情があって」
「でも、亜希ちゃんを殺した罪を罰するのは、警察でしょう」
「……まぁ、そうだ」
「ちゃんと、地道に素直に、悪事や諍い事に身を投じず今まで慎ましく生きて来た甲斐があったわ」
「……お前程、悪女の才能のある奴が、傷害の前科一犯で耐えたんだ。本当なら、どこが慎ましくだと怒る所だが、特別『よく出来ました』をつけてやろう」
「ありがたく、受け取っておきます。お茶を出すから、中にどうぞ」
「お前、良いのか?」
「何が?」
「亭主に俺を会せて」
「当たり前よ。仏壇に手を合わせてあげて。昔言ってたの。私が誰を好きでも良いから、死ぬまでは、俺の妻でいてくれって。もし先に自分が死んだら、後はそいつと一緒になって良い。そう言ってたんだから」
「嘘だろ……。そんなの」
「ふふ、信じて、本当。ねぇ、トウマ」
「何だよ、ショウ?」
「相変わらず独身だけど、死ぬまでに一度、配偶者を儲けてみない。ねぇ、トウマ……『私と結婚してみませんか?』」
半信半疑でも、夢幻(ゆめまぼろし)でも良い
もし叶うなら、答えは勿論『イエス』だった。
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