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そのとき。
…カチャン
物音がした。
重そうな足音までも。
そっか、テレビの音が無いと結構、
近隣の音がハッキリ聞こえるんだな
などと感心していると、
…カチャリ
リビングのドアが開き、誰かが顔を出す。
驚き、クッションを抱え口を塞ぐ。
そうしなければ、叫び出しそうで。
その人は、当たり前のように入って来て、
私に向かってこう言う。
「なんだよ。元気そうじゃないか。
心配しすぎなんだよ、お前の姉貴」
『は?』と問い返した声は、
クッションに吸い込まれたようだ。
待って、どこかで見覚えがあるような…。
切れ長で意志の強そうな目。
それとは対照的に、柔らかく微笑む唇。
長身で、嫌味なほどに整ったその姿。
っていうか義兄さんに似てるよね?
あ、そっか、義兄さんの弟だ!!
確かとっても好印象で、
結婚式の際、新婦側の親族控室に、
キレイな薔薇の花を贈ってくれて。
>これからは兄ともども、
>宜しくお願い致します。
とかメッセージカードが添えてあって、
私とお母さんは大喜びしたんだ。
あ、もしかして義兄さんの荷物を
取りに来たとか?
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