8年目+6カ月

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シャワーを浴びるため、上半身を起こすと、 背後から涼介さんに抱き着かれ。 また、シーツの中に引き戻される。 「…由布、言わなくても分かってると思うけど。 俺たち、そういうワケだから」 うん、分かってる。 大丈夫だよ、勘違いとかしないし。 「こう見えて、俺、独占欲スゴイからな。 ちゃんとあの同級生男とも手を切れよ?」 いいよ。 貴方はいつものままで構わないから。 もう仕方ないの。 だって、好きになっちゃったから。 私が我慢すれば、すべて上手くいくんでしょ? いつでも好きなときに、カラダを合わせられる、 便利な女で、構わない。 たぶん、誰にでもするのであろう、 優しいキス。 それを宝物のようにして受けながら、 私はすべてを諦める。 もう、普通の恋は出来ないんだ。 この人を好きになってしまったから。 これからは嫉妬とか、孤独とか。 そんなものをたくさん味わうだろう。 それでも、この人が欲しい。 つう、と頬を涙が伝った。 それを拭いもせず、私は立ち上がる。 「もう、お腹ペコペコ。何か作るね」 「やった!由布、大好き」 …辛い恋は、 まだ、幕を開けたばかりだ。
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