第1章

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ある日、昂さんがいつも通りウチに来て、 たまたま兄はお風呂に入っていた。 「入浴中?こんな昼間っから??」 「落としたコーラをすぐ飲もうとして、 フタを開けた途端、ブシャーって…」 ぷぷぷ、と2人揃って笑い、 そのまま兄の部屋で寛ぐ。 兄は長風呂で有名で。 昂さんが来ていると伝えれば、 きっと早く出て来ただろうけど、 私はワザとそれを伝えなかったのだ。 いつもの如く彼はベッドへ腰を下ろし、 私はその隣に座る。 2人きりになるのは、初めてではないし、 だから私も特に意識していなかったのに。 …なんとなく、 いつもと雰囲気が違う感じがした。 甘い空気というのだろうか。 この頃の昂さんにはまだ彼女がいなくて。 私もまだ中3のガキンチョで。 ふと彼の手に私の手が触れてしまい、 自分でも驚くほどビクリと肩が震え。 動揺しているのを悟られたくなくて、 冗談交じりで訊いてみた。 「昂さんって、キスしたことある?」 「…うん。そりゃあもう高2だしね」 「一番仲のいいキョーコちゃんが、 彼氏と昨日したんだって。 だから、どんなモノなのかなあと思って」 「そんな特別スゴイものでも無いよ」 昂さんがキスを経験済みだということが、 ショックでもあり、当たり前な気もして。 自分でそんな話題を振っておきながら、 危うい沈黙に耐え切れず、思わず呟く。
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