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その白い布を外したら、俺の世界はただ明るく広がっていると信じていたんだ…。
…始まりは、一カ月前だった。
夕方の河原道をスーツケース片手に鼻歌まじりで、俺は帰り道を歩いていた。夕日を水面が反射してキラキラと輝くのを見ながら、河原でボール遊びをする無邪気な子供達の声に笑みがこぼれる。
「…俺も、あんな頃があったな…」
5時の鐘ギリギリまで泥だらけになって友達とサッカーして遊んでいた子供は、今や二人の子供のいる立派な父親になった。愛する妻と子供達の為に日々働くこの暮らしは、あの頃思い描いていたものとは違うけれども、結構悪くはない。
すっかり減ってしまった革靴で小石を蹴って、顔を上げた瞬間だった…
「…っ、危ない!おじさん!」
顔面に強烈な一撃をくらい、俺は不覚にも気を失った。
…そして、気がついた時には真っ暗だった。
「…え?暗い」
感覚で顔に何か巻きつけられているのがわかる。それをずらそうと無意識に手を伸ばした瞬間、ドアが開く音が聞こえた。
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