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 泣きながら家に帰ると、父さんが驚いた顔で出迎えてくれた。 「どうしたんだい、秋鹿」  秋鹿は何も答えられず、頸を横に振って父親に抱きついた。 「そうか、哀しいことがあったんだね、秋鹿」  父親は泣きじゃくる秋鹿の頭を、温かな手で撫でた。 「今日の夕飯は、ナポリタンにしよう。ウインナーをいっぱい入れて。な、秋鹿」  母親は帰宅が遅くなるからと、父親と秋鹿だけで夕飯を食べた。父親は秋鹿に、泣いていた理由を無理に聞きだそうとはしなかった。二人は今度の休みに観る映画の相談をした。ナポリタンのウィンナーはいつもよりたくさんで、蛸や蟹の形をしていた。  食後に、皿洗いを手伝いながら、秋鹿は父親に頼んだ。 「泣いてたの、母さんには内緒にして」  父親は微笑みながら頷いて、 「判った。内緒にするよ」  秋鹿は安心した。父さんが内緒にすると約束してくれたら、それはもう絶対に内緒なのだ。  父親はテーブルに置かれたチョコレートに気が附いて、 「秋鹿、これ、秋鹿のおやつかい、」  猫にあげられずに持ち帰ったものだった。 「うん」 「食べないのかい、」 「……うん」  父親は不思議そうにチョコレートを取り上げて、 「そうか、これは秋鹿にはまだ苦いかも識れないなあ」
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