Sign of Love

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1  各デスクから聞こえてくるキーボード音には、どこか殺気が乗っている。いわゆる『風通しの良い職場環境』を目指して、各課ごとのパーテーションを取り払ったのが、裏目に出てしまうのが金曜日。この日はわたしたち、総務部顧客管理課の人間にとって戦争だ。 「ふざけてる。現場のやつらは『本社の人間はお役所仕事だ』とか言ってやがるけど、こっちは各運営部から送りつけられてくる全書類のチェックしないきゃいけないってのを分かってない」  言葉を舌打ちで締め括ったのは、隣の席の桐谷栞那(キリタニカンナ)。ヘアアイロンで綺麗に巻かれた髪をうるさそうにシュシュでまとめ、山積みになった大量の封筒を恨めしそうにひと睨み。 これから処理をしなくてはいけない書類、完了した書類、はじいた書類。三つの山の中でも、不備ではじく書類が一番多いのだから、栞那が怒るのも無理はないけれど。 「わたしはもともと運営部にいたから、現場が忙しいのはよく分かるんだよね。でも、契約書類は普通、送る前にもう一度目を通すんだけどなあ」
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