不純な恋愛

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「記念日なのに、そんなんでいいの?」 「うん。ねぇ、このハイボール濃いよ」  私は炭酸水を足して、くるくるとマドラーで混ぜた。 「ごめんごめん。じゃあ記念日は何食べたい?」 「しゃぶしゃぶ」 「いいよ」 「タクミは食べたいものないの?」 「アリサが食べたいのでいいよ」  きっと、タクミは奥さんにも優しいんだろう。  奥さんの事は滅多に口にしないタクミ。  そんな所も好きだった。 「私のこと好き?」 「好きだよ」 「浮気してない?」 「してないよ」  そもそも私達がしてる事が「浮気」なのに、言ってる事がハチャメチャだと我ながら思う。  なら「浮気」というのはどこからが浮気なのか。  二人で会ったら? キスをしたら? 肉体関係を持ったら? バレたら?  後ろめたさを持ったら、逆の立場に立った時嫌だと思うような事だったら、バレて気まずい事なら、私は浮気だと思うことにしている。 「そう言うアリサはどうなの?」   「してないよ」  「するわけないじゃない」と私は、タクミを見て微笑んだ。  私にはもう一人不倫相手がいる。  それなのに私は、平然と嘘をつく。  じゃあここで一旦振り返って考えてみるとして、私の概念で物事を考えてくと、もう一人不倫相手がいるということは「浮気」に当たるのではないだろうか。  だって、私はタクミに他にも付き合っている人間が居るなんてことを知られたくはない。  逆の立場に立った時、タクミの他の女が居たら嫌だ。  だけど冷静に考えると、タクミはもともと奥さんがいる人間で、守るものがある人間で、そんな人とまともに向き合おうという方が、理にかなっていないような気がするんだ。  一生このままの関係を続けるのか?  答えはノーだ。  私もいつかは普通の恋愛をしなくてはならないだろうし、このままタクミに縛られて、結婚もできないなんて、そんなのはごめんだ。  だから「浮気」なんてものはきっと、私達の関係においては、存在するようでしない。  ただ私達は恋愛ごっこを楽しむために、そういうシステムを設けただけなんだ。
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