第一話:母親を殺した少年と恋敵を殺した悪女

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「本当にすみません」 「いいんですよ。困った時はお互い様ですし」 彼と月並みな挨拶を交わし、私は彼の部屋に足を踏み入れる。 狭い部屋を少し歩けば、すぐに透の眠るベットに辿り着く。 本当はこの場で殺してしまいたい衝動を抑え、私はニッコリと笑顔を作って笑いかける。 彼の前では、透に優しい女でなければならないのだ。 おそらくそれが今、彼が結婚する女を選ぶ時の最重要事項になっているであろうことが悔しかった。 やはり今は、彼の中で一番大事なのは透なのだ。 私は小さく唇を噛んだ後、密かに透を睨みつけた。
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