プロローグ

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八月十日 特徴のある右下がりの大きな文字が並んでいる。 理恵は左利きだった。 ぼくがアメリカに出張しているときに、彼女が書いたぼく宛ての手紙だ。 投函されなかった手紙…… その手紙を何度も読み返す。 便箋は香水がついている。ほんのり甘い香りがする。 メールに香りはつけられない。 メールではなく、手紙……なぜ彼女はその手紙を投函しなかったのだろう。 留守中、ぼくの母とお茶を飲んだことなどが書かれている。 そこで彼女はぼくの部屋に入り、持っていた部屋の合鍵を返しておいたのだ。
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