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「なにやってるのー!」
と、もちろん怒られたけれど、ベテラン事務員はすぐにタオルを出してくれ、結乃がそれを持って応接室に戻る間に、お茶を淹れなおして出してくれた。
それから、応接室での話し合いはどうなったのか……。
結乃は胸が押しつぶされそうな思いを抱えて待ち、しばらくして課長や敏生が戻ってくる。
「芹沢くんが担当してた岸川コーポレーションとの取引は、打ち切りになったみたいね」
「先々週、芹沢くんがインフルで休んでて対応できなかったから…?」
どこからかそんな声が囁かれて、結乃の耳にも入ってくる。
結乃は居ても立っても居られなくて、課長のところへ行って謝った。チクリと小言を言われても、何度も頭を下げた。
それから、敏生の姿を探した。オフィスの席には見えず、外回りに出ているわけでもないようだ。結乃はあちこち走り回って、フロアの端っこの休憩スペースの向こう、そこから出られる広々としたテラスに敏生を見つけた。
この寒い時期、吹きっさらしのテラスを使う人間なんていない。敏生はそこに置かれている椅子に座って、一人でうなだれている。
結乃はドアを開けてテラスに出ると、そっと敏生に近づき、その背中に声をかけた。
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