天は人の上にラーメンを作らず……以下略  ガンジー

2/13
61人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
0.  時は平成、世は飽食の時代。  永田町には鵺が住むとは、よく言ったもので、身勝手な国会が新たに打ち出した摩訶不思議な法案『新国民健康保護法』は、衆議院で可決されるも、参議院で物議を醸しだしました。  平行線の議論。提出議案の承認には時間を要し、業を煮やした『時の内閣』は、強行策を計ります。  ある一定以上のコレステロール値を超えるメニューを提供する飲食店を取り締まる機関を、法も定めぬうちに、鶴の一声で設立したのです。  通称『コレステロール警察』。  表向きは町々に蔓延る肥満や成人病から住民を守る機関ですが、彼らは世のB級グルメ、特にラーメンを目の敵にし、数々の愛すべき名店に天誅を下していきました。これを平成グルメ維新と人々は呼びます。  そんな横暴を許すまじかと立ち上がったのは、学生たちでした。 『人間はラーメンを食す自由の基、平等でなくてはならない』  平成のカリスマ、ラーメン党代表である霧ヶ峰マドカ女史の、ラーメンデモクラシーを掲げたこの言葉をスローガンに、学生たちはデモ運動を起こし、町ではコレステロール警察と対立しました。  それは次第にエスカレート、ついには武装し決起集会を開くまでになります。  対立するラーメンデモクラシーとグルメ維新。ぶつかり合う思想と思想。血を血で洗う抗争に次ぐ抗争。  それに終止符を打ったのは、中心人物である霧ヶ峰マドカ女史の突然の失踪でした。  世のアベックたちが、あちこちで逢瀬を重ねるクリスマスの夜のこと、彼女は人知れず姿を消しました。  その後、我ら学生たちは粛清され、武装解除を余儀無くされました。  これはそんな祭の後の、蛇足に満ちた奇妙奇天烈三文芝居。お代は見てからで結構。さぁさぁ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。  
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!