第1章

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朱雀大路の上に細い月がかかる。 星のない夜……真の闇のみが都を包んでいるはずのこの時刻。 連なる屋根の向こうを見透かせば、 ところどころに、 ぽうと微かな灯かりが揺れるのは。 誰ぞが 心もとなさに燈した灯かりなのか……それともそうではない別のものなのか。 闇の中でこそりと動くのは、 鼠か犬か。 あるいは動くはずの無い何かなのか。 静まり返っているはずの夜の裏側には、 絶え間なく蠢いているモノたちがいる。 ――それが夜の都の素顔だ。 どこか遠くで悲鳴が尾をひいた。 人のものとも、 そうでないともつかぬその声が、 断ち切られたようにぱたりと止む。
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