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朱雀大路の上に細い月がかかる。
星のない夜……真の闇のみが都を包んでいるはずのこの時刻。
連なる屋根の向こうを見透かせば、
ところどころに、
ぽうと微かな灯かりが揺れるのは。
誰ぞが 心もとなさに燈した灯かりなのか……それともそうではない別のものなのか。
闇の中でこそりと動くのは、
鼠か犬か。
あるいは動くはずの無い何かなのか。
静まり返っているはずの夜の裏側には、
絶え間なく蠢いているモノたちがいる。
――それが夜の都の素顔だ。
どこか遠くで悲鳴が尾をひいた。
人のものとも、
そうでないともつかぬその声が、
断ち切られたようにぱたりと止む。
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