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と、
闇の中に満ちていた声の無いざわめきが、
はたりと途絶えた。
入れ替わるように聞こえてきたのは紛れもない生きた人間のたてる音。
慌しく走る足音。
具足の触れ合う音。
ふいごのような呼吸音。
二十人近くの男達が暗い小路から飛び出してくる。
手に高価そうな具物を握った者、
剥ぎ取ったのだろう衣を抱えた者、
肩に女を担いだ者。
その全てが血に染まった抜き身の刀を下げていた。
「見てくれ、
俺の持ってきたこの飾り物を」
血に染まった手で一人の男が懐から宝物を出す。
「俺は刀だ。
高く売れる」
野卑な声で口々に言い合う盗賊達を、
一人の男が制した。
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