78人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
手首に伝う赤い血を眺めていると、ふつふつと憎しみが渦を巻く。
私から英司を奪った、美優と呼ばれた女…
あの女さえいなければ、見知らぬ男達に汚されることもなく、英司と幸せなクリスマスを過ごせるはずだったのに。
どうして私だけが、どうして…!!
生まれて初めて感じた、激しい憎悪に身を焦がす。
あの女さえいなくなれば、英司は私の元に戻ってきてくれる…?
「あーすか」と優しい声で私を呼んで、その腕の中にきつく抱き締めてくれる?
英司の心を奪った、あの女が憎い。
誰かあの女を殺してよ…!!
血がぽとりと排水溝に落ち、そこからうねるように黒い靄が現れた。それが瞬く間に塊となり、男の姿へと変形する。
「ひっ…」
小さな悲鳴が零れ、身体が強ばった。
夢に現れた影の男。あれは、ただの幻じゃなかったの…?
最初のコメントを投稿しよう!