恐怖

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手首に伝う赤い血を眺めていると、ふつふつと憎しみが渦を巻く。 私から英司を奪った、美優と呼ばれた女… あの女さえいなければ、見知らぬ男達に汚されることもなく、英司と幸せなクリスマスを過ごせるはずだったのに。 どうして私だけが、どうして…!! 生まれて初めて感じた、激しい憎悪に身を焦がす。 あの女さえいなくなれば、英司は私の元に戻ってきてくれる…? 「あーすか」と優しい声で私を呼んで、その腕の中にきつく抱き締めてくれる? 英司の心を奪った、あの女が憎い。 誰かあの女を殺してよ…!! 血がぽとりと排水溝に落ち、そこからうねるように黒い靄が現れた。それが瞬く間に塊となり、男の姿へと変形する。 「ひっ…」 小さな悲鳴が零れ、身体が強ばった。 夢に現れた影の男。あれは、ただの幻じゃなかったの…?
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