後編

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「そ、それって……仔猫の?」  僕は恐る恐る秋宮さんに訊ねる。 「うん、多分。静本さんたちが今朝見つけたっていう仔猫の脚」  その言葉に静本さんが驚いたように目を見開く。 「ちょ、ちょっと待ってよ。そんなのおかしい!どうして脚だけなの? 私たちが見つけたときは、仔猫の死体は首がないだけだった。それなのに、どうして脚だけになってるの?」  静本さんは混乱した様子でそう疑問を口にする。 「『減った』ってことだよ。首なし死体は持ち去られたんじゃない。今朝見つかってから今までの間に、この脚以外の部分が無くなったんだよ」  秋宮さんの言葉に、静本さんはさらに混乱したようで、仔猫の脚と秋宮さんの顔に交互に視線を泳がせた。  それは、僕や他のクラスメイトたちも同様だった。  静本さん自身もまた、何か恐ろしいものを見るように手の上の脚を見つめている。 「きっと、今朝、静本さんたちが来たから途中でやめたんだ。そして、その後に残った胴体を……」  秋宮さんが呟く言葉に、静本さんはいぶかしげな目を向ける。 「秋宮さん。あなた、さっきから何を言ってるの? わかるように説明して!」  静本さんが声を荒げると、秋宮さんはクラスメイトたちへと顔を向ける。 「……ねえ、みんな。みんながいつも、給食の残りをシロにあげて世話をしてたんだよね。でも、雨が降っていた昨日までの三日間、誰もこの空き地には入らなかった。仔猫を出産して体力を消耗し、栄養を必要としているはずなのに、いつもエサを与えてくれる人たちが来なかった」  そこで、秋宮さんは言葉を切り息を吸った。 「――じゃあ、シロはこの三日間、何も食べなかったのか。それとも……」
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