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誰も、その疑問に答えようとするものはいなかった。
だが、その場にいる全員の脳裏に、ある一つの想像が浮かんでいたことだろう。
誰も言葉を発そうとしない、重苦しい沈黙が立ちこめた。
そして、その静寂の中で、どこからともなく奇妙な音が微かに聞こえてくるのに気が付いた。
雨音のように何かの滴が落ちる音。
そして、何か固いものを削る音。
その場にいるみんなの視線が、空き地の真ん中に置かれた廃車へと注がれる。明らかにその音は、廃車の下から響いてきていた。
秋宮さんでさえ、その音にごくりと唾を飲み込んだ。
「い、嫌……嫌ぁ―ッ!」
空き地に静本さんの悲鳴が響く。
それでも、廃車の下から聞こえ続けるその音をかき消すことはできなかった。
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