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頬から血がにじむ。もしかして。僕の頬をかすったものはもしかして弾丸でしょうか。もしかしなくても弾丸でしょうか。ねえねえ。紀子さん、弾丸で間違いないですよね。背後の壁には弾丸がめり込んだ小さな穴があり煙が上っていた。
やっぱり弾丸ですよね。
ねえねえ。
弾丸。
「紀子さん、君に一つ聞いてもいいかな。もしだよ。そうもしさ」
ぺろぺろキャンディーをなめて誤魔化す紀子。
白々しく口笛まで付ける。
わざとらしい。
「もし当たって死んだらどうするわけ。また転生するからとか言うなよ」
まあ、確かに毒入りミカンを食べて死んで転生したわけだけれども、それでもまた転生できる保証はないわけで。そこんところどうよ、紀子さん。ねえねえ。
「わ、わたくしは聖少女ですわ。よろしくて?」
また僕に向けて銃を構える紀子。
目には累々たる涙。
君は子供か。
「ストップストップ。王様の前よ。そろそろコントも終わりにしなさい」
両手を僕と紀子の各々の胸にあてて場を制する小波。
さすがは小波、大人だ。
そのまな板に干しぶどうをのぞけばな。
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