02 コントと神様

6/10
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
 頬から血がにじむ。もしかして。僕の頬をかすったものはもしかして弾丸でしょうか。もしかしなくても弾丸でしょうか。ねえねえ。紀子さん、弾丸で間違いないですよね。背後の壁には弾丸がめり込んだ小さな穴があり煙が上っていた。  やっぱり弾丸ですよね。  ねえねえ。  弾丸。 「紀子さん、君に一つ聞いてもいいかな。もしだよ。そうもしさ」  ぺろぺろキャンディーをなめて誤魔化す紀子。  白々しく口笛まで付ける。  わざとらしい。 「もし当たって死んだらどうするわけ。また転生するからとか言うなよ」  まあ、確かに毒入りミカンを食べて死んで転生したわけだけれども、それでもまた転生できる保証はないわけで。そこんところどうよ、紀子さん。ねえねえ。 「わ、わたくしは聖少女ですわ。よろしくて?」  また僕に向けて銃を構える紀子。  目には累々たる涙。  君は子供か。 「ストップストップ。王様の前よ。そろそろコントも終わりにしなさい」  両手を僕と紀子の各々の胸にあてて場を制する小波。  さすがは小波、大人だ。  そのまな板に干しぶどうをのぞけばな。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!