45人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
エピローグ:名もなき場所
大きな陸上競技場にいる。
きっとこれは夢なのだろう。
場内アナウンスが、これから男子400mハードル決勝が行われることを告げている。
俺はゴール地点のトラックに近い、低い位置の観客席で群集に紛れている。
やがてシンと静まり返った競技場に雷管の音が轟き、選ばれし八人の決勝進出者がトラック一周の勝負へと向かった。磐石の一位で戻って来たのは……
「キャー!見た見た?アリサ。すごーい!」
「やったー!やったよミッコ!」
俺の隣で二人の美少女がピョンピョンとジャンプしながら手を取り合って喜んでいる。
その片方の、髪が長いほうの絶世の美少女に見憶えがあった。『ミッコ』って呼ばれてたな。
一位でゴールした幸崎宗太郎が観客席にいる俺に気付いた。そして大きく手を挙げて何かを呟く。
「ありがとう、拓朗」
遠い場所からなのに、俺にはハッキリとその声が届いた。
俺はトラック上の宗太郎と目を合わせたまま、小さく頷く。
(夢の続きへ(未来を泳ぐ日 -零-) 完)
※ あとがきは『夢の続きへ -extra stage-』https://estar.jp/extra_novels/25962529に代えさせていただきます
最初のコメントを投稿しよう!