結神様の憂鬱

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「疲れた。……もうイヤだ辞めたいこの仕事マジで」 拝殿の中で行儀悪く寝転び、ぶつぶつと文句を口にする女。 白い神御衣に身を包み、黙っていればそれなりに美しい顔を不機嫌そうに歪めながら、手元の赤い糸を嫌々ながらも手繰り寄せる。 「何言ってるんですか。次のお客さん来てますよ。ほら、いたいけな女子高生です」 それをビシリと咎めるのは、同じような服装をした真面目そうな男だった。 「はぁ? だってこの子どうせあれでしょ? 『明日の席替えでぇ、なんとか君と隣の席になれますようにっ!』とかそういうやつでしょ? はぁ? 何それ青くっさ! 席替えとか青くっさ! 何百年前の話してんのバカじゃないの? 誰が隣にしてやるか! 教室の端と端にしてやっかんな!!」 女の言葉に、男は呆れたように溜め息をついた。 「またそんなこと言って……」 「てかさー、何が楽しくて他人の縁なんか結ばなきゃいけないわけ? 全然楽しくないんだけど。むしろ不快、不愉快だわ!!」 「仕方ないでしょう。ここは縁結びの神社なんですから」 そう。 彼の言う通り、ここは縁結びの神社としてこの地域で少しばかり有名な"恋結(こいゆい)神社"だ。
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