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「あ、いや、すみません!急に声掛けちゃったりして。びっくりしますよね!でも変なやつじゃないから!本当に!」
俺は慌ててそう言い、
「すぐ消えますんで!本当にすみませんでした」
と、足早に立ち去ろうと、今来た道に振り返った。
「あ、あの!!」
後ろからその女性が呼び止めて来たのだ。
「わ、私の歌、その、上手って・・・本当、ですか?」
さっきの歌声とは比べ物にならないくらい弱々しい小さな声で彼女はそう言った。
振り返ると、その女性はブランコから立ち上がり、こちらを不安そうに見つめていた。
初め見た時は、横を向いていたからあまりきちんと顔を見ることが出来ていなかったが、彼女は少し垂れ目の可愛らしい人だった。
背中にまでかかる長く少しクセのある柔らかな黒髪や、足首まであるロングの真っ白なワンピースが、陽の光に照らされて、まるで天使のようにも思えた。
一瞬 そんな彼女の姿に見とれて、すぐ返事が出来ずに居た為、
「変なこと言ってごめんなさい!」
と、泣きそうな表情で、下を向いてしまった。
「ちがうんだ、ごめん、びっくりしちゃって!うん、凄く上手だったよ!だから思わず声を掛けちゃったんだ。」
俺がそういうと、彼女は「嬉しい」と顔を上げて笑顔を見せてくれた。
垂れ目が笑うと、ふにゃりと線のようになる。
それがとても可愛かった。
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