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世の中には数式やプログラムでは説明出来ない不思議な事があるものだと久遠を見て綾原は思った。 自分が造り上げたアンドロイドは完璧で綿密なものだ。 それは例え権利を手放したとしても誰にも真似が出来ないものだと自負している。 権利を手放し、アンドロイド製造が華族の見栄の為に造られるようになっても、綾原が造ったアンドロイドとは何かが違った。 誰もそれを指摘しないし、気が付いていない事もある。 けれどそれは確かにあった。 久遠はそれを証明した。 綾原が託したアンドロイドの可能性。 久遠は可能性の先を見せてくれた。 誠が入院し眠り続けて二ヶ月目。 少しずつ誠への距離を近付けていた久遠は、眠る誠の手を握り、時に愛しそうに微笑み見つめていた。 感情を司る回路は切ったままなのに、時間を掛けて久遠はそこまで自力で感情を産み出した。 自分の中のあらゆるプログラムを誠の為に組み換えたのだ。
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