プロローグ

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どんな小さな村でもいいし、町でもいいが必ず一つや二つは古くから伝わる逸話や、都市伝説がある。 その地域で語られる、その土地に由来する伝承の類いは全国を探せばごまんとある。 俺・ハルは元々、光絵(ヒカリエ)市に住んでいたが父の仕事の関係と病気の母の療養を兼ねて、俺と妹の通う学校が近い事もあり隣の皆星(カイセイ)市に引っ越してきたのはウグイスの鳴く三月下旬頃と記憶する。 四月に皆星学園高等部一年となる俺に、中等部からの付き合いがあるケンから話を持ち掛けられたのが、すべての始まりだ。 春の、心地好い陽気に誘われていた俺はどこかネジの緩んだ気持ちになっており、ケンの甘い言葉に油断していたのだろう。 「なぁハル……願い事がたった一つだけ叶うとしたら、お前は何をお願いする?」 とても他愛も無い中学生らしい会話だった。 ケンは男子・女子共に好感度が高く、小学校から顔馴染みの風間(かざま)とタメを張れるくらいルックスも良かった。
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