とある事件

3/4
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
博士の研究は(かんば)しくなかった。 早く理緒の願いを叶えてやりたい、そう強く願うも、理緒の成長を止める為の装置は実現化しなかった。 実験の失敗を重ねる度、理緒を失望させ、精神を狂わせた。 博士は思う。このままでは理緒は私の元を離れてゆくのではないか。 子供の姿を(とど)められず大人になった理緒に、私が不必要なのは明白だ。 いつまでも理緒を側に置いておく為にはどうしたらいいのか。 博士の頭に時折フッと暗い妄想がよぎる。 肉体の時を止める、それが彼の願いなのだから…… 理緒は連続児童失踪事件の4人目の失踪者になった。 研究所職員の話から、理緒との肉体関係が疑われ、容疑者となった博士も姿を消した。 警察が博士の研究所を家宅捜索する。 「博士は異常者か?」 地下第2倉庫のドアを空けた刑事が、驚いたような呆れたような声を出す。 「この状況を見れば異常者に間違いないでしょうね」 先に室内に居た刑事が答える。 部屋に並べられた2つの巨大な水槽の中に裸体の少女や少年逹が沈められている。彼らは失踪していた少年少女逹だった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!