第5章 雷鳴

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黄流(きりゅう)くんの一言に紫吹(しぶき)桃華(ももか)さんも異論はないようで、組分けはあっさりと決まった。当然誰も副長や兵長を連れてきていないため、雷の国副長である弧遥(こはる)は今回不参加と決まる。魔物退治を任せるようだ。 そのまま解散となり、砦を攻めるのは二日後。それまで戦略を練るようだ。 用意された部屋でゆっくりと目を閉じる。疲れていたのか睡魔はすぐにやってきた。隊長達がいる安心感を感じ、不安が今だけ少し和らぐようだ。 夢を見ている。はっきりとそれが夢とわかる。だって幼い頃の私がそこにいるのだから。遠く懐かしく、どこか寂しくなる空気が辺りを包んでいた。逃げ出したくなるほど私には苦痛で、夢とわかっていても、いや夢とわかっているから胸がとても苦しい。だってこれからなにが起こるか知っているから。見たくない過去が流れ出す。ゆっくりとダムが崩壊したように勢いよく、止まることもないままに。 一番忘れたくて忘れたくないあの日を。
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