恐慌について

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恐慌について

 経済論をカマそうという気はない。しごく個人的な恐慌状態、すなわち「パニック」について書く。  性格的にいって余りパニックに陥るということはないのだけれど、肉体がものすごく健康なので、しばしば食当たりをする。それもなまなかなものではない。極めて倫理的な内臓が、ほんのわずかの雑菌にも過敏に反応し、パニクるのである。嘔吐・下痢・胃痛・発熱といった症状が同時に襲い、いわゆる霍乱(かくらん)状態に陥る。ただしふしぎなことにはたいていの場合、排除すべき毒素が放出されてしまうと、あとはケロリと治る。所要時間は短い時でほんの三十分、長くとも五、六時間であろうか。しかしもちろんその間は死ぬ思いをする。  季節でいうと、自分でも警戒するせいか、夏の盛りにはあまりなく、むしろ梅雨時、または秋口ということが多い。同様の理由からナマ物にはあまり当たらず、むしろ加工品に当たる。具体的な要注意品目を上げるとするなら、エビやカニの甲殻類、加工肉類、卵、乳製品といったところが最もヤバい。     
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