幼馴染はヒーロー

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 俺はなんだか狐につままれたような腑に落ちない気分でそんな二人を見送ったが、結局「まぁいいか」と自分も土管に入り、いつもみたいにみんなでわいわい遊んだのだった。  意外に王子のノリも良く、俺たちはいつしか元からの仲間だったように自然に笑い、楽しい時を過ごしていた。  そうして夢中になって遊んでいた俺たちだったが――、  それぞれの親が迎えに来るたびに秘密基地メンバーも一人、二人と減ってゆき、……いつもと同じに俺とカッキーの二人が土管に残された。  しかし、この日は飛び入り参加した王子もまだ残って俺たちと一緒に遊んでいた。  どんな理由だったかわすれたが、土管にカッキーと王子の二人を残して俺はちょっとその場を離れた。たぶんトイレにでも行っていたのだろう。  そして俺が再び戻ってくると、――驚きの光景が俺を出迎えた。  土管の中で二人が「ちゅー」をしていたのだ。  ……口と口がくっつくアレである。  俺は、土管の入り口でピキンと見事に固まった。 「カッキー、好き。いつかむかえにくるから、……ぼくと結婚シテクダサイ!」 「……………」  ちなみにカッキーも見事に石像と化していた。 「こんどはぼくがきみを守るから、本物のヒーローみたいに強くなるから、ぼくがむかえに来るまで待っててね!」  そんな俺たちをよそに、王子は高らかにそう宣言し、まさにヒーローのごとく颯爽とその場を去っていった。  ――固まった俺たちを残して。  どのくらい固まっていたのか時間の経過がわからなくなった頃、カッキーの首がぎぎぎと錆びついたドアのようにぎこちなく動いて俺の方を見た。 「……ウッチー。男と男ってケッコンできるのか?」 「……できない、…と思う」 「だよな」 「――」 「じゃ、さっきのはジョーダンだな。うっかり口と口がくっついちゃっただけだな」 「――」 「ノーカンノーカン」 「――」 「だよな。ウッチー」 「――」 「おれは忘れる。だからおまえも忘れろ」 「――」 「いいな?」
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