第一話 私 と 『みゆき』 と 神埼親子

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私は、咲希。 でも、歌舞伎町では『みゆき』だった。 高校を卒業直後、私は18歳で歌舞伎町のホステスになった。 ごく普通の家庭で、非普通に育った私は、心が歪曲している事を自ら正しく認識していた。 優しい祖父母、不誠実な父親、したたかな母親の家庭で、すくすくと慈愛・嫉妬・偽証・憐憫・愛情に囲まれて私は、人格を確立し歪曲したのだ。 ホステスになったのは、単に『向いている』と思ったからだ。 そして、不誠実な父親が散々入れ揚げて来た世界の女達の世界に入って、そこで片っ端から気に入らない女達を捻じ伏せてやろうと思っていた。 それに、私は母親に似て綺麗だから。 せめて私は、母親を苦しませて来た女達の世界で、たくさんの女たちに苦汁を舐めさせ、復讐してやろう。 そんな気持ちで、歌舞伎町に足を踏み入れたのがきっかけだった。
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