2017 立春

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春休み以来の実家だ。隣の母を見ると、優しい微笑みを浮かべた。 「かのん。ちゃんと食べてる?」 母らしい気遣う言葉だった。 「食べてるよ。つい作り過ぎちゃって、おじいちゃんと譲り合ってる。」 「そう?少し痩せたんじゃない?かのんは睡眠不足にはならないだろうけど。」 まぁ思春期の娘が夜22時就寝、早朝5時起床と規則正しい生活を送ってるし。 「ふふっ。お兄ちゃんのクッキー食べてるよ。」 「たくさん食べて、たくさん持っていってね。」 「うん!食後の楽しみだもん。」 正面にパティシエRYTHEMがあり、広い駐車場がある。母が慣れたハンドル捌きで停車した。 裏側に住居スペースがあり、スーツケースを抱えて先に家に入った。2階に兄とわたしの個室がある。将来は兄のお嫁さんが住むことになるかもしれない。 スーツケースを置きリュックを背に1階に行くと、ラインで待ち合わせた園ちゃんと泰明くんが、うちのソファーで寛いでいた。 「お待たせ。」 「桐ちゃん昨日ぶり。」 「鈴ちゃんは工藤くんのバイト先を手伝ってるんだって。」 「へぇ。いい雰囲気だったもんね。」 「桐ちゃんでもわかるなら、アイツら付き合うかもな?」 「それ、どういう意味?」 フルーツタルトとガトーショコラを手に、兄がツッコミを入れた。 「かのんが色恋話をすると雨が降るかも。」 「お兄ちゃん、ヒドイ。」 わたしの頭をわしわし撫でながら言う。 「泰明のイマカノが、かのんと親友なんて世の中狭いな。ほら、フルーツタルトは泰明ん家で、ガトーショコラが実夢ちゃん家な?」 「ありがとうございます。」 ふたりは笑顔で受け取った。 昨夜園ちゃんに“泰明くんの家で書道をしに行く”とラインしたら同行したいってお願いされた。泰明くんが園ちゃんを彼女だと紹介する時に、一緒にいて欲しいらしい。 泰明くんの父、義明さんは温厚な方だし心配ないと思うんだけどね。
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