クリスマスの奇跡

6/8
59人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「…俺、ワザワザ先輩に怒られに来たんだけど。聖なる夜に」 「ぷっ…、なにそれ、あはは」 真面目な顔の佐伯くんに吹き出した私は、ゲラゲラと豪快に笑った。 こんなに笑ったのは、久しぶりかもしれない。 「…ちょっと、先輩?なに笑ってんの。俺は真剣に」 「ありがとう、冗談言って励ましにきてくれて。それから、ドリンクのプレゼントも」 そう言って笑うと、佐伯くんは頭をポリポリと掻いた。 「…や、あのね。冗談、じゃないんだ、先輩」 「もうじゅうぶん笑ったから、もういいよ。大丈夫」 そう言って電気を消すと、佐伯くんの背中をポンポンと押した。 「…帰ろうか。イブも終わっちゃったし」 「わかった。…けど、その前に先輩に一つお願いがあるんだけど」 「なに?」 振り返ると彼は私の唇に指差指をあててニッコリと笑った。 「クリスマスプレゼントちょーだい。俺のココに」 …突然の事に目を見開いたまま、私は固まった。 「さ、さ、さ、さ、佐伯くん?」 「うん。佐伯だけど」 そう言ってニッコリ笑う彼にきっと悪気はない。 「ココっ、て」 「唇に。…だって、俺は先輩にプレゼントあげたのに。先輩からはないの?」 純粋な目でじっと見られると、弱いんだけ、ど… …あぁ、そうだ。 「じゃあ、さっきの返す」 「……先輩は人に貰ったものを返すような失礼な事、しないよね」 じとっと見られて、観念したように息を吐く。 「…じゃあ、目を瞑って」 そう言って、背伸びをする。 ちゅっ。 唇が彼の頬をリップ音をたてて離れた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!