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…頬に冷たい感触がして振り返った私は、目を見開いた。
「…え?」
今日はデートしていたはずの佐伯くんが栄養ドリンクを私の頬に押し付けながら屈託なく笑っていて、私は驚きながも栄養ドリンクはきっちり受け取った。
「…先輩、お疲れ様」
「…佐伯くん、なんで…。今日はデートなんじゃ…」
悪戯っぽく笑って、佐伯くんは空いている椅子に座って足を組んだ。
「デートには行きました。彼女の家に。二人でケーキを食べて、シャンパンをのんで…」
「…じゃあ、なんで会社に?忘れもの?」
「………先輩。俺が先輩に仕事押し付けてるあの女を本気で相手にしてると思ってんの?俺は先輩を迎えにきたの。必要なものは手に入ったし」
そう言ってニヤリと笑った彼の手には、彼女と部長の不倫写真が握られていた。
「…っ、それ」
「…俺ね、眼鏡かけはじめたとき眼鏡の大きさが顔にあってなくて。中学、高校といじめられてきたんだよね…」
そう言って彼は椅子から立ち上がった。
「…だから、自分で稼げるようになったら買いかえようってずっと決めてて。先輩、この会社入って、初めての給料で眼鏡買いかえる時に、一緒に眼鏡選ぶのに付き合ってくれたでしょ?…鏡越しに、一生懸命に。…俺、嬉しかったんだ」
そう言った彼の手が私の頬をスルリとなでる。
「…最近クマがひどいのも、会議で寝ちゃって叱られてたのも全部あの女のせいだよね。…頼まれたことを全部馬鹿正直に先輩がやらなくていいと思うんだけど。…厄介なことに先輩、あの女の教育係だし…」
…つまり、彼女が出来なかった責任は私も取らされる。
「…でも、このまま庇い続けてたら先輩が倒れるよ」
….その言葉に、頬を涙が伝った。
「俺ね、空っぽの頭でいっぱい考えた。…先輩の知り合いだって匂わせて彼女に近づいて、彼女の誘惑に乗ったつもりで家まで上がりこんだ。…シャンパンで酔わせて、ベロンベロンの彼女の部屋で拝借してきた彼女と部長の不倫写真を近くの漫画喫茶から会社の人に無差別に拡散してきた後なんだけど。…先輩どうする?」
「…どうするって、言われても」
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