30494人が本棚に入れています
本棚に追加
/1726ページ
「いやー、あの子いまどき珍しいくらい素直だよねえ」
と中山先生が言うので同意した。
「そうですね。本当に正直な子ですよ」
俺に対しての態度がそう物語っている。
俺のことを嫌っている感じが痛いくらい伝わってきますよ。
「彼女、俺の教え方が悪いとはっきり言ってきたんですよ。結構効いて、参りました。中山先生がうらやましいです」
まだまだ未熟者だなあ、とかそういったことを笑いながら返されると思ったのに、彼は意外なことを口にした。
「そうかね? 割と生徒には評判だよ」
「え、そうですか?」
それは、単純にうれしい。
中山先生は少し考えてから感慨深そうに言葉を発した。
「ふうん、上山がそんなことを言ったのか。彼女は割と人を褒めるタイプなのに、君には厳しいんだなあ。それだけ数学への情熱があるということかな?」
彼は声に出して笑い、「まあ頑張れ」と言って立ち去った。
残された俺はしばらく思慮したあと、これではいけないと思い立った。
授業の進め方を見直さなければ。
上山に舐められてたまるか。
最初のコメントを投稿しよう!