一章:大海の歓迎っていうのが実に手荒で

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「きゃあああああ」 怖い!! 助けて、降ろして!! 母船から宙吊りになった潜水調査船『しおみ』の操縦席で、大伴さんが爽やかに笑う。 「どうしても多少揺れる。我慢してくれ、ミチル」 「あの、予想を超えてるんですけどぉおお!?」 前後左右に振られて着水したけど、『しおみ』は外洋の波間に揺れ続けている。 「海はいまだ、謎に満ちている」 やっと落ち着いてきた私の狼狽なんか別世界のことらしい。 ドキュメンタリー番組のナレーションみたいなことを真顔で言ったベンチ博士は、海水に洗われる正面の窓をきっと見つめた。 「この海域はさほど調査も進んでおらず、未知の生物が潜んでいる可能性が高い。今日の調査でその痕跡が発見できれば」 「……その、博士。根拠は」 「私の勘だ」 ロマンは時に面倒臭い。
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