とめどない

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午前中は体育館で劇クラスの発表があった。 うちのクラスの劇は、主役の二人がもともと人気者なこともあって、大盛況のうちに終わった。 監督役だった私は、役も係もなかったので、観客席に座って見ているだけだった。 そのせいか、無事に終わって喜び合う彼らを見ていても、自分のクラスの発表を見ている気分にはなれなくて、自分は部外者という気しかしなかった。 喜びの輪の中心には、青磁がいた。 彼は本番までのまとめ役をそつなくこなし、今日も照明係として活躍したのだ。 部外者になってしまった私とは正反対。 クラスの輪から遠く離れてそれを見ているしかない私は、自分がとうとう集団からはぐれてしまった、と思った。 息が苦しい。 全ての劇の発表が終わり、生徒たちがぞろぞろと体育館を出ていく。 その波に乗って私も教室棟のほうへと向かう。 楽しそうに騒ぐ周囲の声がうるさくて、耳を塞ぎたくなった。 これから各クラスの展示を見る時間だ。 誰と回るか、どこのクラスに行くか、わいわいと話し合っている。 色とりどりに飾られた廊下や教室。 お化け屋敷に行くカップルや、ゲームで遊ぶ集団。 絵に描いたような楽しげな光景の中にいるのに、どうして私だけはこんな気持ちなんだろう。 息ができない。苦しい。 身体が重くて動けない。
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