とめどない

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* 夜のうちに降った雨はやんだけれど、朝の街はどこもかしこも湿っていた。 学校へ向かう足が重い。 地面に目を落としながらゆっくりと歩いていると、目の前に水溜まりがあった。 雨雲が去った後の青い空が映っている。 ローファーが汚れるのも構わず、わざと足を突っ込んで、空を壊した。 ふっと息を吐いて、また歩き出す。 周りを歩く生徒たちは、文化祭当日の朝ということで、浮かれた様子をしている。 いつもよりも声が高くて大きいし、笑顔も多い。 夏の朝の陽射しを浴びて、きらきらしている高校生たち。 そんな中で一人、マスクをして俯いて歩いている自分は明らかに異質な存在だろうな、と頭の片隅で思う。 思ったけれど、そのまま俯いて黙々と校門に入った。 教室も浮わついた活気に溢れている。 誰もがいつもより明るい顔をしていたし、これから本番だという緊張感さえ楽しんでいるようだった。 私だけ、違う。 私だけはこの中に入れない。 居たたまれなくなった私はトイレに行き、結局、開会式が始まる時間ぎりぎりまで個室にこもっていた。
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