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「きゃぁぁぁ」
「どうしました、佳奈さん」
左側を歩く佳奈さんが突然悲鳴を挙げたものだから、僕はびっくりして、彼女の方を見た。
「今、今」
「今、どうしましたか、佳奈さん」
佳奈さんは相当に狼狽している。
僕たちが暮らす街を一望する事が出来る小高い丘の上である。
日曜ということもあって、結構人が居る。
大衆の視線が僕と佳奈さんに集まる。
「朝男さん、私、つい今しがた、凄い事を発見してしまいました」
佳奈さんが正面の松の木を指差している。
「なんですか、佳奈さん、少し落ち着きましょう」
佳奈さんは右肩に掛けたバッグからお茶のペットボトルを取り出し、一口飲んだ。
いつでも涙目にみえてしまう佳奈さんの瞳に幾分かの落ち着きが戻る。
「なんですか、佳奈さん。佳奈さんは何を発見したんですか?」
佳奈さんはお茶をもう一口飲んでから「松ぼっくり」と言った。
「松ぼっくり」
僕は佳奈さんの言葉を反芻した。裏返っていて、我ながら奇妙な声だと思った。
「今さっき」
佳奈さんが松の木を再び指差した。
「あの木から、松ぼっくりが落ちたのです」
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