3

3/7
803人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
「もし君たちの前に、重そうな荷物を運んでいる女の子がいたらどうする?」 「ゴンちゃん何で上から目線?」と俺。 「だってこんな時でもなきゃ、俺がリアルでお前らに教えられらことなんてないだろ?」 「いや、そんな事は……なあ?」と勇作。 うんうん と曖昧に頷く俺たち。 「あーもういいよ。分かったから。 で、荷物を持った女の子がいたらどうする?」 と、ゴンちゃんは田崎を見た。 「そこは『持ってあげようか?』って聞くだろ?普通」 田崎の答えと同じく俺もそう思った。 「そこが七瀬は俺たちと違うんだよ。 『貸しなよ。持ってあげるから』って俺が持つこと前提なわけ」 「でもさ、男に持ってもらいたくない荷物だってあるかもしれないだろ? 『いいよ、大丈夫だから』って結構言われたことあるよ、俺」 勇作が食べ終わった弁当箱にフタをしながら口出しをする。 「そこは『本当に大丈夫?』って言って」 「なら俺たちと変わんないじゃん。 俺だって『ホントに大丈夫?』って聞いて相手が『うん』って言ったら退くもん。 無理に『いいよ、持ってやるから』なんて言ったら相手が嫌がりそうだし」 ゴンちゃんの話を遮って田崎が口を挟んだ。 「それはそうなんだけど」とゴンちゃんは続けた。 「断られたら必ず『分かった。頑張ってね』って笑顔で言うんだよ。 それが女子だけじゃなく俺たちにも先輩にも後輩にも。 嫌味ったらしくなく」 へー。 女子だけにならカッコつけたい、モテたいヤツ? ってなるんだけど…… 「青ちゃんはさ、 いつ捨てられたか分からない、床にこぼれた牛乳を拭いた雑巾が入っているゴミ箱を、自分から収集場所に持って行く?」 『牛乳を拭いた雑巾』と言われて、あの独特の酸っぱいような吐き気を催す匂いを思い出してしまって、思わず鼻にシワを寄せてしまった。 みんなもあの匂いは覚えているだろ? 「自分からは持っていかないな。出来れば避けたいよ」 「先生から言われたら?」 「その場合も仕方なくだな。絶対『クセーッ!』って言いながら」 「だよねー」と何故かゴンちゃんが同意を得たとばかりに嬉しそうな顔をした。 「だけど」とゴンちゃんは俺たちを見回して 「七瀬は文句一つも言わず、自分から捨てに行くんだよ。 それも周りが気づかないうちにさ」
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!