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何だか道徳の教科書に出てくる良い子の話を聞いている気分になってきた。
だから俺はつい言ってしまった。
「アイツがいい奴って言うのは分かったけどさ。
そんなに良い子だとイジメられなかったの?」
「俺もそれ思った」と勇作が言えば「俺も」と田崎だ。
「おい3人で俺を見つめないでくれる?」
ゴンちゃんが困ったような顔をした。
俺は今までより更に声を潜めると「どうなの?」と突っ込んだ。
「うん。小学校の時陰口をたたかれたり、物を隠されたりって事はあったみたいだよ」
「やっぱり……な」
「だけど、そんなのすぐに終わったよ」
「え?」「何で?」「どうやって?」
俺たち3人の息の合った「?」にゴンちゃんは体を乗り出して、小さな声で話し始めた。
「アイツの二つ上の従兄が
『大海(ひろうみ)に嫌がらせしてるのはどいつだ?』
って教室まで押しかけてきたんだよ。
小4から見れば6年は大きく見えてさ。
やっぱり“怖い”って思ったんだろうな。
それ以降イジメは減っていったんだよ。
5年になっても今度はその従兄の友達って奴等が目を光らせていてさ。
小学校のイジメは無くなって、その代わりアイツが“親切でいいヤツ”って理解されてきて今度は友達が増えていったんだよ」
「だけど中学じゃそうはいかなかったんじゃない?
ウザいヤツってならなかったの?」
俺はまた聞いてみた。
アイツに興味を持ち始めていたなんて、まだ俺は気づいていなかった。
「それがその従兄の兄ちゃんサッカー部のキャプテンになっていてさ。
友達が沢山いて人望が高いその人が『大海ー』って何かしら声かけていれば、アイツに嫌がらせしようなんて奴は出てこなかったよ。
それにアイツ自身も友達に恵まれていてさ。
その従兄を尊敬しているサッカー部のヤツやその繋がりで運動部の奴と友達になっていったから、中学ではイジメとは無縁だった筈だよ」
そう言われてみれば、
「確かに今も体育系の部活に入っている奴と友達みたいだな」
と俺がゴンちゃんを見ると
「だろ?」
ってゴンちゃんが頷き返してきた。
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