九年

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 黙ってしまった相棒―――ウルは放っておいて、陣に近づく。  この陣は魔力がある限り半永久的に幻獣を生み出すから、発見次第可能なら潰さなきゃいけない。  ただ、不用意に接近しちゃうと――――――  {おい、チューリ、出るぞ。}  だね。  ――――――防衛機能か、強力な幻獣を生み出す。  陣は周囲の魔力を吸収し、瞬く間に莫大な魔力の塊が生み出される。  三秒もしない内に、でっかい猿みたいなのが木の上に現れた。  ……猿?  頭は犬、胴体は猿、尻尾は蛇。  たしか、獣系統上級のラピオーネン。  {混ざり物が、醜悪じゃ。}  私たちがそれを言うの?  {其方も相変わらず、言うのう………で、弱点は?}  汚い声で笑い、流石の脚力で木の上を飛び回り始めた犬猿。  攪乱目的か、縦横無尽に木の枝を渡り歩き、既に常人では追えない速度だ。  その速度で背後に回った犬猿は、木の上から私めがけて跳びかかってきた。  ………まぁ。  「喉元」  龍の五感、膂力は、たとえ全力で無くともこんな犬猿に負けはしない。  長い手の内側に滑り込み、その首を掴みあげる。  そのまま握力に任せて喉を握りつぶした。
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