スクリーンの中

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彼は私に気を使ってくれたのか、自分は忙しいだろうお昼休みに連絡をくれた。 彼からの連絡は心の準備をしていたつもりなので、それほど驚くはずはなかったのだが、 胸の奥が掴まれたようにきつくなった。 彼は厨房にいるのか、声の背後から様々な雑音と一緒に一人ではない人の声が聞こえてくる。 心配した私が大丈夫かと尋ねると、彼は笑った。 「予約を受けるのも、材料の発注も、いつも調理しながらだよ。でも……厨房にいるみんなは僕が君に電話してるとは思わないだろうけどね」 そう言いながらも彼は、途中で中の誰かに指示を出していた。 「でも、僕もそんなに暇じゃないから本題に入るけど」 彼は前置きしていくつかスタッフへの指示を挟みながら話し始めた。
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