メガネをかけた死神

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
今世界各地で180人の死神が活動している。 その中でたった一人、メガネをかけた死神がいる。 「骸骨のオレ達にはメガネなんて要らないぜ。 おまけにそのメガネ、フレームも曲がっていて レンズも無いじゃないか」 仲間に笑われても、死神ハプロは外そうとしない。 ハプロが死神として大鎌を持ち、臨終の人々の魂を 狩る様になったのはかれこれ300年以上前からだ。 彼の大鎌に首を刎ねられた者は何万人も何十万人 にも上る。骸骨の馬に乗り、今日も魂をスパッと 狩り取っている。 ハプロが300年前死神になった頃、ある爺さんの家 を訪れた。神様から「この者が寿命だ」と指示されて 三日以内にその首を狩り取る必要がある。それを 過ぎると死神が神様から罰を受ける。 ハプロはその日も爺さんの部屋に入ると大鎌を メガネの爺さんの首元にスッと当てた。サッサと仕事 を終わらせて、次の所へ向かおう。 だが、爺さんは死神を見ても驚かないどころか、 ニコニコ笑顔で喜んでいる。他の者達はハプロの姿を 見ると決まって怖れおののき、強張った表情となり、 涙を流して「見逃して欲しい」と命乞いをすると言うのに。 「ああ、どうもすみませんね。すっかり身体が弱って 髭も剃れなくなってしまって。死神が迎えに来る前に サッパリしたいと思っていた所なのです」 そのままスパッと首を刎ねても良かったのだが、 どうせなら髭を剃ってサッパリしてからの方が魂も 安心してあの世へ行くだろうと、ジョリジョリ大鎌で 髭を剃ってやった。 「いやあ、こんなに切れ味の鋭い刃をお持ちなら、 丁度良い。紐が切れなくて開けられない荷物が あって困っていたのです。その刃でチョイと椅子の 上の荷物の紐を切って貰えませんか」 見ると確かに椅子の上に荷物がある。ハプロが いとも簡単に紐を切り、荷物を開けてやると、 中から沢山のお菓子が出て来た。 「有難う、親切な方ですね。お礼にこのお菓子を 食べて下さい。私はもう食べられませんから」 「私は死神だ。オマエの首を刎ねる為に来たのだ。 食べ物は必要無い」 すると 「私は見ての通り、独り身なのです。私が死んだら どなたかが私を埋葬してくれる。その方達にお礼を する為にお菓子を買ったのですが。 こんな遠い辺鄙な場所まで来て頂いて、本当に 有難う御座います。何かお礼をさせて頂きたいの ですが」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!