迂回しても恋は恋

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「…よく聞こえなかったんだが」 あまりにも衝撃的な言葉に、俺は驚きを禁じ得ない。 しかし目の前の彼女は満面の笑顔である。まるで彼女の入ったことに違和感を感じてしまっている俺こそがおかしいんだと言わんばかりに。 そして、ここでいつもとは違うことが起きた。 俺には悪戯っぽい笑顔しか見せたことがない彼女の顔がいつもとは大きく違って見えたのだ。 なぜだかその笑顔に心臓が高鳴ってしまった。 いや、この際正直に言おう。 その笑顔は、今まで見たどんな女性のそれよりも輝いて見えたのだ。 「好きな人できたんです。だからメガネ先輩また協力してくださいね」 おいおい。嘘だろ。なんてこった、最悪だ。 人間ってのはこんなにマッハで恋に落ちてしまうものなのだろうか。しかもよりによって他に好きな奴がいる相手を。 いや、これはきっとメガネのせいだ。メガネの魔力だ。そう自分に言い聞かせていると不意に彼女が耳に口を近づけてきて、何かをつぶやいた。 「ちゃーんと責任、とってくださいね」
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