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「メガネせんぱーい」
放課後の校庭に明るく快活な声が響き渡る。満面の笑みを浮かべながら彼女はこちらに向かって走ってくる。
肩にかかるかかからないかくらいの黒い髪を上下に揺らしながら走ってくる彼女は、どうしても周りにいる人間の注目を集めてしまうようだ。
やや大きめの黒目がち。まつ毛も長く少し上にカールしている。化粧もしていないのに透明感のある肌に若者らしい健康的な唇の赤。
要するに彼女の容姿はとても可愛らしい。
「メガネ先輩ってば!一緒に帰りましょ」
そんな人物がニコリと微笑んでこんなことを言うのだ。そりゃ周囲からは痛いほどの羨望の視線が突き刺さってくるのは致し方ないだろう。
「お前な。もうちょっと周りの目を気にしろよ。仮にも他に好きな男がいるのに、変な勘違いされたらどうするんだよ」
俺の言葉に彼女は一瞬ポカンとした表情を浮かべた。しかし次の瞬間にはニヤニヤと含みのある表情に変わり、バシッと俺の背中にやや強めの力で打撃を与える。
「まっさかー。私とメガネ先輩に限ってー。ていうかメガネ先輩に限ってそんなことないでしょー」
「なんで今俺一人に限定したんだお前は」
まあ、その真意は言われるまでもなく分かってるけどな。
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