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踵を返したその時。
「ああ、ちょっと待って」
う、なんだよ、面倒くさそうな気がして、妙な見た目のおじさんに、僕は露骨に嫌そうな顔をした。
「熱心に念じておりましたね」
う、絡むなよ、変なヤツだな。
だから、人混みは嫌なんだ。
ひょうたんオヤジは、ニヤニヤしながら言葉を続けた。
「もしかして、貴方の望み、モテたい、とかじゃありませんか」
図星を突かれたその言葉に、僕は驚きよりも、憤りを覚えた。
「な、なんだよ、いきなり、失礼だろ」
「いや、いや、すいません。ただ、貴方のその格好が、とても個性的でしたので」
なに!?僕の格好が個性的だって。
裾の窄まったジョッキーパンツ、肩の張ったジャケット、中は鮮やかな赤のシャツ、これ見よがしなウエスタンブーツ。
「どこがだよ」
「いや、いや、いや、随分と年代物に見えましたので」
聞き捨てならない。
僕は、自分のファッションをとやかく言われると、どうしてもムキになって反論をしてしまう。
「確かに古くは見えるけど、決してボロい、汚いって訳じゃない、何年も、どんな時でも、大事に、気を張って使っているからであって、これはお値打ち物の超愛用品なんだぞ」
ニタり顔のひょうたんオヤジは、興奮した僕を気にもせず、続けた。
「はい、そのせいで、モテない、とは言っておりません」
今、モテないと言ったな。
「なんだと貴様、僕がモテないだと!ぼ、僕だって恋人の1人や2人、いた事あるわ、コノヤロ」
実際は恋人と言えるまで進展した事は無い。
僕は顔を真っ赤にして、今にも殴りかかる勢いだった。
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