【職人気質】

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「うわっ、やっちまった…」 と、俺は自分の頭をかきながら呟いた。 つい、さっきの昼メシ時…。 俺は、おっかぁが作ってくれた弁当を食おうとして「さて。ついでに目を休ませようかな」と、メガネを外して脇に置いたんだが… うっかり下に落としてしまい、 その上、勢い余って踏ん付けて『パリン!』と、割っちまった。 「あっ!」 と、気付いた時には、 もう後の祭り…。 まあ… 一度、割れちまったモノは、もうどうにもならねえわな…。 「………」 目の前の景色が… ぼんやりと、ぼやけている…。 マイったな…。 午後からも、現場だってのに…。 「ま、しゃーないか」 多少、視界は霞んではいるが… 俺は、この仕事を随分と長く続けているんだ。 長年、現場で鍛え上げた『仕事の腕前』と『カン』だけは誰にも、ひけを取ってないツモリだ。 それさえ有りゃ、何とかなるってもんだろ。 確かに、世の中に目を使う仕事ってのは、たくさん有る。 俺の仕事だって、まあそうだわな。 でもよ。 いくら、目がスコーンと、よく見えたってな。 肝心のソイツの腕前とカンが大した事無けりゃ、 ろくな仕事もできないってもんだ。 俺も、今の仕事を長くやってるうちに、すっかり歳を取っちまったが… それでも、そこいらのペーペーには、まだまだ仕事の腕前は負けちゃいないツモリだ。 俺は… これまでもいろいろと、きっちり、こなして来た。 実は、今まで一度だってヘマした事なんて無いんだぜ。 だから、俺は上のヤツラからも覚えが、めでてぇんだ。 そんな訳で、俺はこれまで何度も現場の責任者を任せられてるって訳さ。 あ…。 でも、五年にイッペンくらいは、ちっさいヘマしたかな(笑)
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