届かぬ叫び

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ホテルのテレビをつけると どのチャンネルにも、ほんの数日前まで奈穂子達が住んでいたアパートが映しだされていた。 残酷にも床下に 生きたまま埋め込まれていた死後1週間の乳児は 奈穂子達の前に あの部屋に住んでいた6人家族の末の子供だと断定された。 乳児の遺体からは虐待と思われる形跡が多数見つかり 警察は 両親を容疑者として逮捕し、現在取り調べ中だという。 死後1週間 死後1週間… この言葉が頭から離れなかった。 そう 奈穂子達が越してきて3日ほどは 生きていたのだ。 慶一が床をトントン叩いて 応答していた相手は木暮静子ではなく 瀕死の赤ん坊だった… 助けを求める声なき声に 息子の慶一は気付いていたのだ。 きっとそれを奈穂子達に知らせようとしていた 気付いてあげられなくてごめん ごめんね…。 「全然気付かなかったんですけどぉ そういえばよく泣き声が聞こえてましたねー。 兄弟が多いからかな~ぐらいにしか思わなかったけど 本当にいたたまれないです 信じられないっていうかぁ…」 顔にはモザイクがかけられ 声も変えられているが インタビューに答えているのは、三好亜希子だった。 報道を消し 奈穂子は慶一を思い切り抱きしめた。 震えが止まらなかった。 慶一は消えたテレビに向かって手を振っていた。 「あ~え~…」  (またね…)
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