届かぬ叫び

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予想通り そこにはパジャマにガウンを羽織った木暮静子が立っていた。 「夜遅くにほんまにすいません!テレビを倒してしまって…」 「あぁ…、よかった!怪我ない?僕ちゃんに何かあったんかと心配になったけん…」 てっきり怒って苦情を言いに来たと思ったが 木暮静子の顔は 本気で心配してくれているようだった。 「木暮さん、、越してきた日の晩とか、夜中にうるさくしてすいませんでした。」 天井を突かれていた件も、もうこの機会に謝ってスッキリしておきたかった。 「え?木下さんとこは全然よぉ。すぐマット敷いてくれたって言うとったでしょ?」 …あんだけ天井突いといて何言ってんだ? やっぱり木暮さんて変わった人なのかな… 「ちょうど木下さんたちが越してきた日から3日、主人の実家の母親が体調崩して、私ら実家に帰っとったんよ~。それに昼間はけっこう留守してるから…」 「…え?でも…」 「前に住んでた家族が賑やかな人らやったからね~。木下さんとこはまだ赤ちゃんやからか、静かやね~って思とったぐらいよ。  だから今の音には何があったんかびっくりして…」 ……??? 木暮静子が嘘を言ってるようには見えなかった。 怪我とかないならいいのよ、と言って帰っていった。 「なぁ敏史、聞いた?あれだけコンコン突かれてたんは、なんやったんやろ?旦那さん…?」 「それより奈穂子、、床にえらい傷つけてもーたわ。  これ黙ってたら、この部屋出る時高くつくかな」 よりによってマットのない場所に直撃してしまっていた。 「…悲惨。ホームセンターで塗料とか買ってきて直されへんかな…」 そう言いながらマットを剥がすと フローリングの一部に、剥げたような跡があることに気付いた。 慶一がしきりにトントン叩く場所だった。 「これ…うちらがやったんちゃうでな?」 「もうそれも明日管理会社に電話して一緒にみてもらお。俺もう眠すぎて限界…」 あくびをしながら寝室へと消える敏史。 奈穂子はなかなか寝付けずに フローリングの傷と 木暮静子のことを考えていた。 それに更に出費が嵩む…一体いくらかかるんやろう…。
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