探偵ごっこ(3)

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『旅人をねんごろにせよ!』  その歌声に、浮羽が、「なんだか、熱いねえ」と、呟いていた。「活気がある」  そのまま僕らは、別府駅前通りを並んで進んだ。 「いつもより、人が多い気がするね」と、僕。 「そう?」残暑を全く感じていないかのように、浮羽が、ツンと澄ましていた。「どれどれ」と、大きな瞳をきょろきょろさせる。  人差し指を顎に当てて、「まあ、土曜日だからじゃないかな。きっと、気のせいだよ」と、はぐらかす様に続けた。  僕らの視界に、大きな白い物体が入ったのは、その時だった。 「あっ! 『べっちょん』だ!」と、浮羽が目を輝かせている。「可愛いなあ。ああ、なんて可愛いのでしょう」 『べっちょん』は、大分県別府市の宣伝部長を務めている、ゆるキャラだ。
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