叫ぶ缶詰

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 うわぁ、本当に小さいおっさんだぁ。普通の冴えないおっさんがミニチュアサイズになってる。うけるっ、キモカワイイ! あたしは軽くテンションが上がった。 「お前はん、人類に属してるくせに、ようわしのこと助けてくれよったなぁ。おおきに、ほんまおおきに」 「おじさん、これからどうするつもりなの?」 「わしらの種族は地下で暮らしとんねん。うちは岸和田の地下やから、そこへ帰りますわ」 「そっかぁ……」 「日本の政府機関にとっつかまってから二十八年、ようやく自由の身になれましたって……ちょっ、何すんねん! こらっ」  あたしはおっさんの体をつまみあげて、使い終わったインスタントコーヒーの瓶に入れた。 「珍しいから飼うことに決めたわ。でも一つ疑問なのは、この缶詰どうしてうちの戸棚に紛れ込んでたのかしら? 怪しげな特売品を買いだめした時かなぁ……」 「知らんがな、そんなことよりこっから出せ、おっさんなんか飼ってもしゃあないやろ! なっ? 考え直すんや」 「ううん、軽い暇つぶしには使えそうだし、餌もいらないんでしょ。逃がす手はないわ」  ギャァギャアとわめき散らすおっさんを無視して、あたしはコーヒーのラベルを剥がしてから、瓶をテーブルの隅に置いた。  四十六年間もお一人様として生きてきたあたしだ。もしかしたら神様が見かねて『おっさん缶詰』を戸棚に入れてくれたのかもしれない。どうせなら『イケメン缶詰・イタリア風味』とかにしてくれたらよかったのにと思うけど、まぁ贅沢は言えないか……  なにはともあれ、このような経緯で、あたしは小さいおじさんと出会った。そしてその後は、二人で末永く無駄話をしながら、人生をやり過ごしたのでした。  おしまい。
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